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炭素循環農法へ 2009年11月3日

→修正 2009/11/04、2009/11/17

以前にも少し触れたが炭素循環農法(→or 紹介記事)を、ささやかなわが菜園で試すことにした。この農法では肥料(化学肥料、有機肥料を問わず)と農薬を使わない。類似の手法はいくつかあるが、おおかた“使わない”にこだわって、妙に意固地だったり、やせ我慢だったり、神がかっていたり、する。炭循農法にはそうしたところが(たぶん)ない。

実践者は、この農法による野菜は、従来農法に比して手間いらずで、収量は多く、美味だという。さらに、作物は健康で病害虫には犯されにくく、農薬は不要になる、ともいう。いいとこずくめで、頭からすべてを信じるほど、平坦な人生を過ごしてきたわけではないが、やってみたくなったのである。

この農法のポイントは、人間は畑に肥料を与えるのではなく、畑に菌(キノコ類)を培養することにある。森林では、樹木自身の落葉、あるいは、他の樹木の遺骸である枯木を菌類が分解して、樹木の吸収できる栄養分に還元し、それをまた樹木が吸収して生長する。地面からの養分の供給に関して自己完結的な循環が森林を成立させている。この養分の供給方式を畑に応用する。つまり、植物の栄養供給を菌の活動にゆだねるのだ。

農作物の場合は、森林と違って作物の成果の大半は、畑から人間が持ち出して消費してしまう。その代わりに菌類の餌となるもの、つまり、森林における落葉・枯木に相当するものを人間が畑に供給する必要がある。落葉・枯木以外に、稲・麦藁、籾殻、竹・木材チップ、雑草などでもかまわない。利用しなければ処分に困るようなものばかりである。要諦は、炭素/窒素(C/N)比40以上の資材を畑に供給する。なぜC/N比が目安になるかというと、C/N比が低い、つまり窒素分が多いと、菌の餌になりにくく、細菌の餌となって腐敗しやすいからという。当方、農業の常識にとんと無知だったから、すんなりそうかと思ったが。適正なC/N比の考え方は従来農法(15〜20程度がベストとする)とまったく違う。菌の働きを重視するかしないかが、違いの生じる理由らしい。

従来の農法から、炭循農法へ移行する場合の指標が2つある。

(1)清浄度  肥料として与えられた無機窒素の過多。多いほど不浄。

(2)肥沃度  菌の資材分解による窒素、炭素の供給量の過多。多いほど肥沃。

無機窒素を減らすには、従来の肥料を施さず、雑草を生やしたり、何か作物を作れば、おのずと消費されてなくなる。その過程では、ひどく虫にやられて不作になるが、そこは我慢だ。それと並行して高炭素資材を畑に投入し菌を培養する。すでに述べたように、高炭素資材は田舎ならどこにでもあるようなものばかり。家の回りの薮を刈ればいくらでも供給できる。

とはいっても、冬に向かわんとするこの時期はタイミングが悪い(正確には、この農法を知る少し前に購入してあったものを流用する意味で 2009/11/17)。そこでとりあえず、高炭素資材として、ホームセンターなどで入手できるバーク堆肥、籾殻(と糠)を使っている。バーク堆肥は木材チップを発酵させたもので、C/N比が高く普通の堆肥とは違い肥料としての養分はほとんどない。籾殻を厚く撒いて、それに糠をわずかにまぶす。その上にバーク堆肥を被せる。糠はやりすぎると肥料と同じになってしまうが、この場合の意味は、菌の発生を促すためだ。焚き火と同じで、マッチ(→糠)で火を付けて、燃えやすい粗朶(→籾殻)で温度を上げ、薪(→バーク堆肥)で本格的な火床(→菌床)を作る。

糠は多すぎた籾殻

糠、籾殻、バーク堆肥は、炭循を知るまえに、発酵肥料を考えていた時点で購入したもので、糠の量が多すぎる。籾殻とバーク堆肥は、菌の餌となるのでいくらあってもよい。

バーク堆肥

炭素資材は年間u当たり10キロ程度供給する必要があるという。相当な量である。買わなければならないバーク堆肥や籾殻(1袋400〜500円)だけでは苦しい。炭素資材の補給を手頃な経費と労力で継続できるかどうかが、炭循の一番の鍵になりそうだ。

以下の写真で、黒く見えるのはバーク堆肥。白っぽいのはたっぷりの籾殻に糠を少々混ぜたもの。炭循では、畝の間にも餌を撒く。

スティックセニョール(左)、冬菜、春菊…混植左ニンジン、右ネギ

葉っぱ類は、適当に混植。あとは、いわゆるコンパニオン・プランツ、相性の良い組合せを考えて植えている。

左ニラ、右ニンジン左パセリ、中ニンニク、右アスパラ

アスパラは茎枯れ病で全滅寸前。炭循の効果は間に合いそうにない。

アスパラの右に、エンドウとカブの混植
右端はエンドウ用の ネット

炭循農法へ移行といっても、まだ以前の肥料が残っているし、菌が培養され、その分解物質が栄養として植物に十分供給されるには時間がかかる。あと2年くらいはじっと我慢かもしれない。

  
   
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