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スカシユリ 2012年7月11日

鹿島灘海岸のスカシユリがそろそろ見頃である。いつもは7月のはじめに見に行くが、それでは少し早いようなので、10日ほど遅らせてみた。今日は風が強く、写真には向かないが、梅雨の晴れ間もそろそろ終わりそうなので出かけることにした。今日は浜風はお留守番。

タブノキの実ヤブカンゾウ

海岸までの道路脇には、毎年おなじみの花が咲いていた。

ムシトリナデシコヒルザキツキミソウ
サンジャクバーベナアガパンサス、ヒメヒオウギズイセン

海岸の手前の丘陵を越えて、驚いた。海岸線は見わたす限り延々と防波堤の工事が行われている。どうやら防波堤とその陸側の道路の修復工事らしい。修復というより、新たに作り替えているようだ。

防波堤と道路の修復工事
ここは海浜植物がもっとも密度濃く生育していた場所

工事用の道路は、防波堤内側の住宅を避けるために、旧防波堤位置の海側に付けられている。鹿島灘海岸を汀線から堰堤まで横断的に見てみると、海に近い側は終始波に洗われる広い砂浜、それからしだいに高度を上げながら草地が始まって、いろいろな海浜植物が繁茂している。さらに防波堤に至って浜は終わり、その内側に道路が走っている(といっても大半は砂に埋もれていた)。場所によっては、防波堤に並行して海側に小さな砂の丘陵が形成されているところもある。海浜植物の密度がもっとも濃いのが防波堤に近い小丘陵や草地一帯である。現在の海岸工事は、このもっとも植生の豊かな部分を工事用道路のために破壊しつくしている。

植生を分断する道路小丘陵

はじめは、たまたま海岸へ出たところが工事中なのかとおもったが、そうではなかった。部分補修ではなく、鹿島灘の海岸全体が工事現場になっていた。工事で排除された砂が水際ちかくまで押し出され、円錐形の砂山を形成している。とても散歩の風情ではない。暗澹たる気分に襲われつつも、なじみの群生地は見ておきたいので、そこを目指して「工事現場」を歩いた。

しばらく進むと、破壊を逃れた場所では、いつもよりスカシユリの花が多いことに気付いた。これまで見に来ていた時期が早すぎたのか、あるいは、野生の群落でよくあるように、今年は当たり年なのかわからないが、なんとなくほっとする。

垣根の裾の……斜面全体に点在

毎年観察している群落は無事だった。ここはいつもより少し花数が少ないような気もするが、はじめて黄色いスカシユリを見た。

いつもの群落 やや花は少なめ

ことしは黄色い花が混ざっていた。初見参!!!

初見参の黄色のスカシユリ

スカシユリは園芸種が多いので、黄色のスカシユリも店先などで見たことはあるが、まさか自生しているとは。あとで手元の図鑑を数冊調べてみたが、色は「黄赤」とするものがおおく、野生種に「黄色」のタイプがあると明記してあるものはなかった。

実は毎年訪ねる群生地が、この先にもうひとつあった。しかしそこは、防波堤の間際の窪地の中。おそらく、どこまで続いているか見当もつかない工事用道路の底深く埋没してしまっているはず。この状態では、例え群生地にたどり着いても、ここだったと特定することもできないだろう。それでもまあ、悲惨とも言える環境にもめげず、あちこちに大きな群落を見ることができた。工事が収束すれば、何年かかるかしれないが、もとの植生の復元することを願って、今日はこれまでとしよう。

  
   
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