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荒船風穴 2014年11月30日

年末恒例の山仲間の集まりの帰途、先頃世界遺産に指定された富岡製糸場の関連施設、下仁田町の「荒船風穴」を目指すことになった。内山峠をトンネルで抜けてすぐに左に荒船風穴への分岐があるが、ここは大雨による土砂崩れで通行できない。次の分岐は峰の茶屋を過ぎた辺りにあるが、そこはのっけからスイッチバックしないと入れない山道だった(あとで調べると意外にもこれが旧254号)。車のすれ違いはやっとの幅員で、舗装はされているのだが急勾配の急カーブが続く。途中に、神津牧場・荒船風穴方面7キロの標識があった。初めからこの長途とわかっていれば諦めたものを、もう遅い。

ルートについて

いまさらな話しだが、荒船風穴へ長野側からアプローチする場合、内山トンネルの出口近くの林道が使えないとすれば、内山トンネルを使わずにトンネル入口で右側へ分岐する道(実は旧254号)を使って内山峠越えをするのが正解だったかもしれない。いずれにしても戻りは今回の道を使うことにはなるが。

また富岡方面からアプローチするなら、下仁田の市街から出るシャトルワゴンの利用が楽だろう。このルートは一般車は入れないようだ。

マップ

Googleマップのこの辺りの道路の表現は国土地理院の地図に比べると不正確であり、だいぶ誤差がある。とくに新旧の国道254が幅員がまったく異なるのに、同じ表現になっていて区別がつかない。下記に国土地理院の地図で、国道(新254)から山道(旧254)への分岐付近(地名「白井平」の下)の状況を示しておく。こちらの地図では現在利用されている国道は赤、旧道は白ではっきり区別されている。また、分岐付近でスイッチバックせざるをえない様子も見て取れるだろう。また神津牧場から荒船風穴までの道路と、それが下仁田の市野萱まで通じている道路に接続している様子は地理院地図にも反映されていない。

地理院地図に利用したルートを載せたかったが、残念ながら国土地理院のファイル読込が今回はうまく機能しなかった。

荒船風穴の見学者用の駐車場は神津牧場の中心部をすぎてなお2キロほど先にあった。周りは開けているが、急作りの鉄板を敷き詰めた駐車場で、そからは徒歩で700mほど舗装された急な山道を下る(標高差で100mほど)。帰りの急登を考えてだろう、風穴の案内所にタクシーが常駐していて片道710円である。国土地理院の地図には「荒船風穴蚕種貯蔵所跡」(縮尺25000のまま白井平から北北東へスクロールすると見える)とある。下ってくる見学者を待ちかねるかのようにガイドが資料を配布し、ある程度人数がまとまると施設の案内をしてくれる。将来はどうなるかわからないが今は無料である。風穴というからには洞窟でも待ち受けているかと思ったが、目の前に現れたのは石組みの深い堀のような構造物で、それを風穴と呼んでいた。風穴は谷間の斜面に位置し、上から1号、2号、3号と並んでいる。順路はまず一番下の3号を南側から見て蚕種管理について概要の説明を受けてから、3号を下から回り込むように北側へ移動して2号で温度管理の説明などがあり、最後にもっとも古い1号(かって崩れたものを復元)へ至る。

荒船風穴の説明はこちらに詳しい

明治から大正にかけて絹糸が日本の外貨獲得の主役だったことは学校で習ったが、その一翼をこの施設が担ったわけだ。蚕種の管理が富岡工場向けだけでなく商業化していたことが意外だった。いまに残る蚕種保管の台帳を調べてみると、富岡に限らずほとんど全国から蚕種がここへ送られて有償で管理されていたという。もちろん他所にも蚕種貯蔵施設はあったが、ここは全国有数の規模だった。交通手段の未発達だった時代に、北は北海道から南は鹿児島まで、どうやって蚕種を送り、また送り返したのか、考えるだけで気が遠くなる。

それともうひとつ意外だったのは温度管理のこと。風穴から吹き出す風の温度が数度℃に安定しているのは夏場であって、10月を過ぎると外気温の影響を受け出すという。冬期間の降雪が解けて山体に浸み込み、凍結した地下水が恒温性の原因であって、夏をすぎるころにそれが消滅するため外気の変化を受け出すようだ。見学者が手をかざして体感できる風穴が何カ所かあったが、いずれも冷風の吹き出しはほとんど感じられなかったのはそのためだろう。

風穴の全容 下から順に3号、2号、1号の石組み

運営されていた当時は各石組みに上屋があった。

最下部の3号の前で説明するガイドさん3号石組み
下から見る3号の石組2号と3号

3号風穴の下を回り込んで、2号、1号へ。

2号左壁側同右壁側

風穴は一様な石組みに見えるが、実際には上手の右側の石組みには細い隙間があって冷風が吹き出し、下手の石組みは目張りがされていて冷気を逃さないようになっている。2号風穴の前に温度計があり、現在の外気温と風穴の吹き出し温度のリアルタイムの計測結果が表示されている。風穴の温度は4℃で、外気温との差は10℃を超えていた。細かいことになるが、説明では1号、2号、3号のように構造体全体を「風穴」とも、また、各構造体の積石の隙間の吹き出し部分も「風穴」とも呼んで、区別なく使われている。

当時の上屋の復元模型上屋内部の写真

最後に一番高い位置にある1号風穴を見る。 

1号風穴

この遺跡は国土地理院の地図には古くから記載されていたというが、世界遺産に登録されなければ、訪れることはなかったろう。富岡製糸場の方はずいぶん賑わっているようだが、こちらはアプローチが面倒なせいもあって閑散としている。でも予想したより人出は多かった。偶然にもわれわれが訪れた日は、今年最後の公開日だった。再開は来年4月1日まで待たねばならない。

本日はこれまで。

  
   
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