道草Web

NHKがGoogle本社を取材したドキュメントが放送された(2007/01/21)。パソコンが生活の中に組み込まれているひとなら、Googleは一日に何度お世話になるかしれない。これは是非見なくてはと楽しみだった。民放のドキュメントものは、それでなくても中身が薄いうえに見たくもない広告が入る。つまらないところはナレーションの声音とBGMの味付けで誤魔化し、ちょっと面白そうなところは、思わせぶりな画面をちらっとみせて、直後に延々とCMを挿入し、再開してみればさしたることでもないのに、しつこく繰り返して時間を引き延ばす。だからドキュメントはNHKに限ると思っている。しかし、この放送にはガッカリだった。新鮮な驚きはなにもなかった。

Googleの検索原理も解説されていたが、既知のことばかりで目新しいことはない。Webの世界に張り巡らされた情報のリンクを川上へ遡行する、つまり参照している側からされている側へ辿っていけば情報源へたどり着くという、気づいてしまえばコロンブスの卵的な原理である。ある山の麓から登りだしたとすると、とにかく上へ上へと目指して行けば頂上へ辿りつくのと似ている(登山はそんなに簡単ではないが、検索も同じだろう)。この原理で情報源を洗い出し、つぎに参照される回数で検索結果を表示する順位を決める。これが基本だ。実際には順位の重み付けにさらに付帯的な100近い計算条件があるらしい。その原理に気づいたのはすごいがGoogleがここまできたのは、それをインターネット上で実際に追跡して決定する仕組みを実現するだけの実務能力(おそらく膨大なコンピュータパワーを駆使して、発見した原理に基づく結果を計算するための技術)を開発できたことだろう。そのあたり生の経緯や発展過程がわかるのかと期待したが、社内の面白そうな場面だけつまみ食い的に写したり、Googleを利用して二次的、三次的な商売をしているひとや会社の話しばかりでうんざりした。Googleの検索で何位かに入っていないと、その企業は存在価値がないそうだ。なんだか、企業に点数を付けて金儲けをしているランキング会社の話と変わらない。

あまり取材に応じない最高経営責任者が番組に出演することが、この番組の前宣伝の売りだった。確かにどんな人物か興味があった。でてきたのはなんだか新興宗教の教祖様のようで気持ちが悪い。それでも、どんな突飛で思いもつかない面白いアイデアでも聴けるのかと期待したが、全世界の情報をGoogoleの下に置きたいのだそうだ。情報の世界制覇を目論んでいると、ぬけぬけとおっしゃる。武力は古い、情報の力で世界国家を樹立するのだ、とでも言い出しかねない。なんだか気持ワルイを通りこして、そら恐ろしい。この爬虫類的な雰囲気は、どうやらMicrosoft社のだれかさんにも通じている。ただ、後者のほうがまだ可愛さがある。一方は、自社の製品を一生懸命売ろうとし、少しでも目立つソフトがあるとかたっぱしから買収して自社製にしようとする。もう一方は、Microsoftなら高額で売り出しそうなソフトでもただで使わせてくれる。どうぞただでどんどんお使いください。ただし、そこで得た情報はすべて自分の懐に入れる。ただで提供するすべてのソフトが、情報を吸い上げる仕掛けとなっている。そして、その情報は、高額の給与で雇われた優秀な頭脳集団によって分析され、いずれ広告集めの強力なネタになるのだ。

世の中は、Microsoft贔屓とGoogle贔屓に別れるそうだ。いままではWindowsやOfficeソフトに苦労させられた(もちろんそれ以上に助かっているのだが)せいもあって、どちらかというとGoogle派だったが、この番組をみて考えが変わった。どちらも同根。商業ベースの集金機構である。ただ、Googleのほうが数段ずるがしこい。それをわからせてくれたのだから、NHKのこの番組も評価すべきか。そこから先に踏み込んで分析する力はないが、かの賢人チョムスキーならGoogleの存在をどう評価するのか(もうすでに何か発言しているのか)知りたいものだ。

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