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カブラ寿司の作り方 2008年3月6日更新

材料について
作業手順について
スケジューリングのポイント
本仕込み
ケーススタディ

カブラ寿司を大好物とするひとは多い。ぼくもその一人。酒の肴に、これ以上のものは考えられない。

このタイトルで検索すると、商品としてのカブラ寿司とともに、好き者のページがたくさんヒットする。自分で作る場合、これらのサイトが参考になるが、カブの種類と大小、魚の種類(ブリかサバ)か、副材料(ユズ、ニンジン、赤唐辛子)に何をどう使うか、魚の塩漬けの方法、カブの塩漬けの方法、それぞれのサイトで千差万別。数年掛けて試行錯誤の結果、自分なりの方法に到達した。まだ決定版とはいいきれないが、紹介しよう。

カブラ寿司の作り方(まとめ)

材料について

基本的に素材はこだわらない。カブにしろ魚にしろ、近所で手に入るものですますことにしている。

ぼくの場合、魚はサバを使う。サバも近頃は高級魚になってしまったが、C/Pからしてブリより圧倒的にいい。天然物の最高のブリを使えばどうかしらないが、養殖のハマチ程度ならサバのほうがぼくの好みだ。シメサバにできる鮮度が目安。

カブは葉付きのやや大ぶりのものにする。荒漬け、本漬けとも使うので、葉は必須。最低限、葉の黄色くなっていないものにしたい。

作業手順について

カブラ寿司を作成するには、いくつかの準備作業が発生する。時間のかかる順に列挙すると次のようになる。

(1)サバ(ブリ)を塩漬けにする(サバは1週間以上、ブリは2週間以上)。

(2)カブを塩漬けにする(4日程度)。

(3)サバ(ブリ)を酢で1晩塩抜きする(1日)。

(4)麹床を作る(6時間)。

サバ(ブリ)の塩漬け保存できるので、早めに作っておける。麹床も一度作っておけば冷蔵庫で保存できる。カブの塩漬けはできたらすぐに使う方がいい。カブの漬けあがったらすぐに本漬けしたい。

スケジューリングのポイント

サバ(ブリ)を1週間(2週間)以上前に塩漬けにしておき、あとは、良いカブが手に入ったらカブを漬けて、カブの漬けあがり(4日)にあわせて、前日に、サバ(ブリ)の塩抜きと麹床の作成に着手する。

本仕込み

本仕込みは、容器の下に塩漬けしたカブの葉を敷き麹を撒き、その上に、サバ(ブリ)の切り身をカブでサンドイッチしたものを並べ、一段並べ終わったら、副材料を散らして、麹を撒く。これを何層かに重ねる。最後に、塩漬けしたカブの葉で容器の内周を覆って、落とし蓋をして重石をかける。

ケーススタディ

以下、時間を追って作業経過を報告する。

サバの塩漬け 2008年1月20日

シメサバとまったく同じと考えればいい。

三枚におろしたサバ。
腹側の骨はすく。中骨はまま、皮は引いていない。
塩漬け

三枚におろしたサバにタップリ塩を撒いて(重量比10%目安)、ビニール袋に密閉し、冷蔵庫で1週間程度保存する。それ以上保存する場合は、サバから相当水が出ているから、塩水は捨てる。

中サイズのサバ5匹。写真は4匹だがあとで追加。1.6キロ

カブの塩漬け 2008年1月22日

カブの茎と葉をやや厚めに切り落とす切り落とした茎と葉
カブを真横に4等分。
太めの箸などを置いて、切ると簡単
中央を切り離す(手でもげる)

カブの切り方は、素人には結構むずかしい。数ミリの厚さを残して止めるのがポイントだが、うっかりすると切りすぎて2枚に切り離してしまう。

何度かやるうちに一番やりやすい方法が分かった。次の写真に示すように、ナイフの切っ先をまな板につけ、それを支点にして切り下ろす。そうすれば、把手の大きさがあるから、完全に切り離してしまうことはまずない。適当な角度まだ切り下ろして、止めるのは容易だ。

ナイフの切っ先を支点にして切る
切り終わったカブ 5キロ
カブの皮を剥くとか、
形を整えるひともいるが
そういう無駄なことは一切しない
容器の底にカブの葉を敷き、切ったカブを置く
塩をしながら何層にもカブを置く最後にカブの葉で蓋をして塩を撒く
落とし蓋重石(約10キロ)
 
容器の蓋ができないのでビニールで覆う

カブは水が上がりやすい。翌日の状態は、次のとおりだ。

カブの並びに偏りがあるので重石がずれた
落とし蓋に水が上がっている
カブの位置を調整して重石を水平にする

カブの水の上がり 2008年1月25日

朝方、水の上がり方を確認する。順調である。

重石も偏らず水が上がっている重石の下を隠すまで上がってきている
麹床の作成 2008年1月25日

麹床は6時間60℃を維持することがポイントとなる。60℃というのは、麹の発酵に最適であるだけなく、普通の腐敗菌が増殖するには高すぎる温度である。また、それ以上高くなっても、今度は麹の酵母が殺菌されてしまう。麹の酵母により、モチ米のデンプンがすくすくと気持ちよく糖化するためにどうしても必要な条件なのだ。

60℃は、環境微生物資料の作成温度よりだいぶ高い。そこで、今回は発泡スチロールのトロ箱を使うことにした。発泡スチロールは、断熱性は高いが融解温度が低く、90℃以上になるともろくなる。もちろん、ヒーターが直接触れると穴が開きかねない。

 
モチ米を炊く
炊き方普通のウルチ米と同じ
 

乾燥麹と炊きあがったモチ米の混ぜ方にもちょっとしたコツがある。粘りの強いモチ米とぼそぼその麹は結構混ぜにくいものである。

(1)乾燥麹は、別容器で細かく砕いておく(左下写真の右側ボール内)。

(2)炊きあがったモチ米を入れた内釜に指定量の水を加えて混ぜる。

これによって、モチ米の温度を下げると同時に、粘りがなくなり、麹を混ぜやすくなる。

(3)内釜に、(1)の麹を少しずつ加えながら、まんべんなく混ぜる。その間、なるべく60℃前後を維持することが望ましいので手早く行う。

炊きあがった炊飯器の内ガマを利用左側がセラミックヒーター
容器の底から離すため皿を敷いた

都度、道具や手順が変わるので、必ずなにか新しいプチ事件がおきる。その対応でなかなか余裕がない。今回も最初に予定していた容器では小さすぎて、電気釜の内釜をそのまま流用し、内釜には蓋がないから行平鍋の木蓋の取っ手を外して利用した。

鍋の取っ手を外して内釜の蓋としたトロ箱の蓋を閉める
発泡スチロールの可塑性のため
コードが挟まっていても密閉度はよく保温性は高い
発泡スチロールだから温度計を蓋から差し込める
 湯煎の温度を直接測れるので安心感がある
2時間ほどたったら様子を見る
水分が出て、甘酒の香りがするはず
ついでに、麹床をかき混ぜてやる
順調ならあとはそのままそっとしておく

去年までは、電気釜の保温機能を使っていた。機種にもよるのだろうが、維持温度が高すぎて60℃を保つのに苦労をした。サーモスタットのおかげで楽ができる。湯煎温度を直接監視できるのは非常に安心感がある。これで、一杯やりながら、のんびり夕食の支度ができる。

麹床完成
蜂蜜色の上澄み液が見える
これを湯でとけば甘酒

発酵6時間で、たっぷり甘い麹床ができあがった。できた麹床は、明日の仕込みに供えて、暖房のない屋内に保存しておく。夏時だと、冷まして冷蔵庫へ入れたほうがよい。やったことはないが、発酵が進みすぎると酸っぱくなるらしい。

塩サバをもどす 2008年1月25日

明日の仕込みのために、塩鯖を酢水で戻しておく。

冷蔵庫から取り出した塩サバまるで身欠きニシンのように固い
水をかけて塩を流す1:1の酢水に浸す

ひたひたの酢水に浸して一晩おく。まんべんなくもどるように、何度か天地返し。あまり酢水が多いと塩が抜けすぎるようだし、酢だけでは酸味が勝ちすぎるようなきがする(いずれも未確認だが)。

酢は水で薄めずに、そのままタップリ使ってもよいようだ。おもったほど仕上がりに影響はない(追記2008/03/06)。

以下追記:2008年3月6日 

ニシンを使うこともある。身欠きニシンでもよいが、干物ニシンを使った例を紹介する。

干物のニシン(身欠きニシンではない)
アゴと尻尾末端の部分ははずす
小骨はそのままで酢に浸す
酢に漬けてアク抜きと同時に小骨を柔らかくする仕込み方はサバと同じ
カブラ寿司の仕込み 2008年1月26日

まず、これまでに用意した材料とを揃える。

これが使用する全材料塩漬けのカブを取り出し水を切る
酢水で戻したサバも取り出して水を切るサバの皮を引く
すべて引き終わった中骨を抜く
身が締まってやりにくい
骨抜きは塩漬け前がいいかもしれない
水分を拭き取るきれいになったサバ
サバをそぎ切りにするユズの皮をそぐ
細かく切るニンジンの皮を剥く
ニンジンを千切りにする
器用なひとは花のように切る
赤唐辛子を半切りにする
種を取り除く細かく刻む
仕込み準備完了ユズと赤唐辛子は混ぜておく
カブにサバを挟むいったんすべて挟み込んで全体の量を調整する
今回少しサバが多い
余ったサバもそのままで適当にばらまく
麹とサバだけだって美味いよ
カブの葉を敷き麹を撒くサバを挟んだカブを並べる
ニンジン、ユズ、赤唐辛子を散らす
この上にまた麹を撒き、カブを敷く
同様に繰り返して何層かに重ね
最後の段の麹を撒いたら、周囲にカブの葉を詰める
落とし蓋をする
隙間がカブの葉で埋まるように
重石をする
外蓋をして包む
これから戸外の日陰に出す
翌日にはもう水が上がっている

あと約1週間、熟成を待つ。

逆さ重石にかける 2008年2月2日

逆さ重石で、寿司のよぶんな液を絞り出す。

手順は、上澄みを捨てて、容器を天地逆にして、ゲタの上に被せ、さらに、容器の底に重石を置くのだ。

外蓋を外す重石を外す
上澄み液を捨てた
落とし蓋の周囲にしっかりカブの葉を詰め直す
隙間があると麹がこぼれる
大鍋にゲタとして常滑の容器を使う
ゲタの高さが十分ないと
寿司の容器の縁が底に達し
しっかり水切りができない
寿司の容器を逆さまにして、
落とし蓋はそのままで、ゲタの上に被せる
もちろん中に寿司が入っている
これぞ逆さ重石

できあがりは、明日。

できました 2008年2月3日

逆さ重石を外し、完成!!!

落とし蓋を空ける
カブの葉は捨てる
中はこんな具合
容器に移して冷蔵庫で保存
もちろん、いますぐにでも食べられる
これから一杯。
食べやすいように半分に切ったところ
手前、左側は、あぶれたサバの一片に
麹と具を載せたもの
もちろんこれはこれで、絶品。

で、味は? ふっつ、ふっつ、ふ。

 

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