道草Web

ビリケンさん拝見

先週、大阪の豊野へ仕事で(仕事ですぞ!)出かけた。ちょっとした取材で、すぐに終わって、3時頃梅田へ戻った。まだ時間に余裕はあるし、これを予期して東京駅で『大阪まっぷる』というガイドを買っておいたので、大阪縦断を試みた。縦断はちっとオーバーだが、要はJR環状線(東京の山手線に相当する)の梅田(キタ)から御堂筋を南下して、環状線の中央にある難波(ミナミ)を通過し、反対側の新今宮か天王寺(安部野)あたりまで歩いて、環状線で戻って来てみるかと思った。

御堂筋は立派だ。東京などと道路のスケールが違う。中央に4車線(それもすべて一方通行)、その両側に新緑の並木があり、さらに側路がある。つまり、車道は6車線で、東京なら並木の部分も路にしちゃうだろうから、10車線分くらいの道幅がある。もちろん歩道は別だ。どうも、名古屋にしろ大阪にしろ、道路では決定的に負けているね、東京は。

この立派な御堂筋をしばらく下り、川を二つ越えて中之島を通過すると、西本願寺の北御堂、南御堂があった。見るべき景観はないが、なんだかスケールは壮大だ。そう言えば、築地の本願寺も似たようなものか。それで御堂筋なんだろうねと、独りで納得する。

コイさんだかイトはんだかのいた船場を過ぎると心斎橋だ。さらに進むと、左側に大丸デパートがあり、その奥に心斎橋筋が並行するようになる。もちろん中間に建物があるので御堂筋から直接は見えないが、例のガイドと首っ引きで歩いているので、地図上の判断。

また、御堂筋を中心に、心斎橋筋と反対側に、丁度、原宿の竹下通りを引き伸ばしたような若者街が展開している。茶髪、金髪(というからには日本人)、白人、黒人がたむろし、両側の店からガンガンとラップが流れてくる。なんだか、若者街のスケールも、東京は負けてるようだ。

大阪で、銀座四丁目辺りに相当するのは、心斎橋筋の戎橋か?。阪神ファンが、感極まってどぶ川に飛び込むところであり、最近では、グリコのランナーがサッカー日本代表のウエアに着替えたネオンサインの輝くところだ。これは、是非見ておきたいので、心斎橋筋へ進路を変えた。戎橋にしばし佇み、通り過ぎる人の流れを見る。戎橋が少し高くなっているので、心斎橋筋が見下ろせる。蟻んこの行列のように人が流れているのは、渋谷、新宿と似たようなもので、いまどき、日本全国大都会は同じだろうか。飛び降りる阪神ファンの心境を思いやりつつ、戎橋を後にする。

この近くに、国立文楽劇場があるので、敬意を表していくことにする。三宅坂の国立小劇場は、文楽東京公演で毎度だが、本家で文楽はまだ見たことがない。せめて、小屋だけでもご尊顔を拝しておこうと思った。東京の国立劇場が皇居前の、最高の立地にあるのに比して、この劇場は、なんとラブホテル街と高速道路に挟まれてある。いかにも大阪的なたくましさを感じてしまう。切符売り場が屋内にあり、食堂も常時営業しているので、観劇でなくても小屋の中に入ることができる。これは、入って中を見学せずばやと、闖入した。なるほど、これが本場の文楽劇場かと、しばし感激。トイレもあったので、小用を足し、初見参を終えた。

それから、難波方向へ戻り、千日前通りを南下する。うっかりして、新歌舞伎座が近くにあったのを見逃してしまった、残念。後日の再訪を期す。千日前のどんづまりは、かの有名な吉本会館。そこから路はぐっと狭くなって、その先に道具屋街が続く。東京でいうと浅草の合羽橋だ。鍋、釜、調理器具をかいくぐって、表へでると、日本橋電気屋街だ。合羽橋と秋葉原が隣接しているようなものかな。道具屋街は合羽橋ほどのスケールはないが、電気屋街は相当広い。秋葉原に密度では負けるが、面積では負けていないようだ。渋谷へ進出したので話題になっている、ナカヌキ屋(なんという即物的、大阪的ネーミング)の黄色い看板が目立った。

電気街の次は、とうとう通天閣に至る。この高さというものは、東京ではすでに意味がないだろう。大阪でもキタでは、もやは存在価値はなかろう。高層建築のないミナミでしか生き残れない名所だ。おそらくそう長くはない。いまだ東京タワーに登ったことのない のに何のためらいもなく、入場料600円なりを払って、通天閣へ登った。ははは、これが観光客心理というものだ。

展望台からの大阪の眺めは、視野を遮るものがないので、じつに清々している。遙かキタの北にしか高層建築がないからだ。眼下には市立美術館の直線的な建物が目立ち、その周囲の公園の緑が目にしみる。ここで、かの有名なビリケンさんのエネルギッシュな姿を拝み(といっても周囲をオバサン連が取り囲み、記念写真で浮かれていたので通過したのみ)、これで600円は高いなどとつぶやきながら、そそくさと通天閣を降りた。

あとは、眼前に立ちふさがるようにそびえる巨大なクアハウス(太閤さん譲りで、やることが何でも大きおまんな)を通り抜けると、新今宮駅である。これで、環状線縦断は終わったが、日は明るいし、まだ少々時間がある。脚は大分くたばってはいるが、ここまできたら、もう一足。四天王寺を訪ねることにした。いわずもがな、聖徳太子が法隆寺とともに建てた日本最古の部類に属する寺だ。

天王寺動物園を迂回するようにして、四天王寺へ向かう。途中の道路は、ホームレスのホーム(???)で占拠されている。丁度新築工事中で、ホームレスにも元大工がいるのだろう、電動工具などを持ち出して(そういえば電気はどこから取ったのか?)、マイホームの建設にいそしんでいた。

四天王寺は、内園はすでに閉門していて、中には入れなかった。再三火災にあい、先次の大戦でも燃えているので、いかにも近頃できあいといった風情で有り難みはないが、それでも伽藍の配置に風格を感じさせる。山門前に、「大日本仏法最初四天王寺」の大きな石碑があった。もっとも裏に回ると石碑の建立は平成であった。

天王寺の駅近辺に戻り、面白そうな店があたので、今日のとどめに一杯やる。刺身のリストに、ヨコワとある。こりゃ何ジャと問うと、マグロとカツオの中間の魚だという。そんなのあったかと、とりあえずそいつとタコ刺しを頼んでみたが、どうもメジらしい(そう言うんですか冨山さん?)。あまり、飲む気もしなかったので、生ビールとお燗一本でそこを出て、たこ焼き(最近 、これに凝っている)屋へ入った。焼きBeerという訳の分からんメニューがあったので訊ねると、焼きそば+タコ焼き+ビールのセットメニューだという。迷わずそれを頼む。駅の地下街の、シャビーな店だったが、亭主の愛想は絶品だ。若いのが入ってくると、おお、学生さんか、ほな負けたろう、そばも野菜たっぷりやでえ、といいながら、手元を見ると別に量は変わっていない。こういうのがリップサービスというのだろう。それでも、若人は嬉しそうに、実は勤めてます、などと返事をしていた。

ま、雑文、駄文の最たる大阪紀行、このへんでお許されませ。  

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