道草Web

いま、2階の仕事部屋のカーテンを開け放っている。まぶしくて目が痛くなるほどだ。眼前は桜の林。その先は青空。ときおり風が吹き付けて花弁が散る。

昔は、桜は満開がいいと思っていた。散るのが惜しい、散って欲しくないと。

今年などは、少し違う。満開を過ぎて、散りだしたころのほうが楽しめるようになった。樹冠にはまだ沢山花が残っているし、風が吹けば花吹雪が美しい。地べたは真っ白に花弁が敷き詰められている。華やかな中に寂しさがただよって、ときどきウグイスの澄んだ声が響く(今年はウグイスが近所に居着いている)。見上げても花、見渡しても花、見下ろしても花。空間を満たす豪奢な雰囲気は、満開のときより勝っているのではないか。

もう頑張らなくてもいいや、姦しいヒヨドリのついばみに任せ、吹く風のなぶりにまかせ、散るものは散れ。盛りをすぎた気分のゆるみ、多少のくつろぎのほうが好ましくなったのだ。一花も散らず咲き誇っている桜には緊張感がある。それがうとましくなったのかもしれない。

おっと、なんだこれは。ジジイの愚痴か。俺にはまだそんなゆとりはないぜ。でも、いたしかたなし、そう感じてしまうのだ。


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