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日比谷シティ夜能

この企画は23回目というがはじめて見る。めずらしい場所でやるので興味があった。ビルの狭間の騒音のなかで能はやはり無理のようだ。もちろんPAを使うのだが。屋外の自然が能に興趣を添えるという環境ではない。客層を見ると普段の能楽堂とはまったく異なり、あきらかに近所に勤める若いサラリーマン風と思えるひとが多い。その意味で新たな客層を開拓するという目的を達しているのかも知れないが、それが日常的な観能客の増加に繋がっているとも思えない。

仕舞 『巴』 角当直隆

仕舞『野守』 小田切康陽

『痩松』 万作、高野和徳

万作というのはつくづく花がない。高野和徳は何度か見たような気がするが、無難なでき。

『邯鄲』六郎

この能ははじめてだが、なかなか面白い構成で見どころも多い。六郎は太りすぎて脇正からみると、千と千尋の名無しみたいだったが、舞がはじまると気にならなくなるのは芸の力 か。

曲の中心は「楽」で、作り物の引っ立て大宮ならぬ、引っ立て大藁屋の一畳台で舞い、また、降りて舞台て舞う(「夢中酔舞」の小書きは台を降りないというが、それではもの足りないだろう)。制約が多い台上の舞から解き放たれた、後半の舞が圧巻だった。見 どころの“空下り”は見事に決まった。舞終わって最後に舞台に臥すところも劇的。満足した。

ただ、見所が慣れないせいで、シテが橋掛りに向かうとすぐに私語がはじまってしまった。能は、舞い収めてから囃子方が橋掛りを去るまでの余韻がいいのだ。もっとも、やっと終わったかと、ほっとする能もないことはないが。


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