中国人は禿げないのか? なぜか漢詩に禿がでてこない。
ざっと思いつくのを挙げても…………
白髪三千丈 愁いによりてかくのごとく長し(李白)
白頭掻けばさらに短く すべてカザシにたえざらんと欲す(杜甫)
艱難はなはだ恨む繁霜の鬢(杜甫)
須臾にして鶴髪 乱れて糸の如し(劉庭芝)
白髪、白頭、繁霜の鬢、鶴髪、みなすべて白髪であって禿ではない。
しゃくにさわるのでパロってみた。
禿頭三千間 楽しみによりてかくのごとく闊し
禿頭掻けばさらに短く カザシもつるりと滑らんと欲す
享楽はなはだ励む禿頭の頂き
須臾にして禿頭 光りて灯火のごとし
ふーん、やっぱり白髪にはかなわんか。
で、突如閃いたが、一句ある。
少々にして郷を離れ 老大にしてかえる 郷音あらたまるな く鬢毛くだく(賀知章)
年少にして故郷を離れて年取って帰ってきたけどいまだ訛りは抜けず、鬢毛がくだければ、なくなるんだから、賀知章は禿げである。
このひとは大酒飲みの詩人で、今でいうと文部次官くらいまでいったひとだから詩才だけでなく官吏としても優秀だったんだ。そうそう、李白の詩才を最初に見いだして詩仙と評したのはこのひとだという。
能力があっただけでなく人柄がおおらかだったらしく、杜甫は、「知章の馬に騎るや舟に乗るに似たり目に花咲き井に落ちて水底に眠る」と詠っている。
いつも酔っぱらって馬に乗ってるから舟に乗っているみたいにゆらゆらしていて、眼は花が咲いたように赤くて、そのうち井戸に落っこってもそのまま水底で眠っていた
知章の人柄はこの人の次の句でよくわかる。
主人相知らず 偶坐せるは林泉がためなり みだりに酒をかうをおそるるなかれ 嚢中おのずと銭あり
かってに他人の家に入り込み、ご主人面識ないけど「なかなかのお庭でんな。銭はどうでもなるさかい酒こうてきてんか」…ってな意味ですね。
そういえば漢詩の中に金の話がでてくるのも、これくらいかな。賀知章ってとても個性的だったんだと思う。
ははは、白髪と禿から大分話がそれてしまった。