道草Web

『信時潔』ありがとうございました。

やっと読み終わりましたが、ぼくにはどうも異質なものが感じられて楽しめませんでした。漠然とした印象にすぎませんが、この著者のザラザラとして 硬直した精神的風土のようなものが立ちはだかって書物の中へ入り込むことができませんでした。明治初年的異形の系譜とは言い得て妙ですが、絵画や音楽における意義なり価値とは直接結びつかないでしょう。その時代の日本でしかなかった精神のあり方、あるいは、時代の流れに隔絶して屹立する孤峰としての存在感は感じます。しかし、「日本の近代というものが今日から振り返れば、音楽に限らず、絵画、文学、あるいは思想の分野において「悪酒的近代」に酔ったにすぎなかったのは明かであろう」p-82と いわれてしまうと、“えっ?”っとなって、さらには、食傷気味で読みたくはなかった付録で、「私は、また見つかった、何が、国体が、…………」p-174となると、なんだ、だったら最初からこの記事だけ別刷りにして配ればよかったじゃない、それなら、無駄に余計な文章を読まなくて済んだのにと感じたのでした。

彼の真意はなへんにありや?の読後感です。

信時潔の評価そのものはぼくには分かりません。われらが世代でもあの歌を知らないひとは少ないでしょうが、それほど切実に聞いた体験はないはずです。信時潔へ入る前に、手前でつまずいてしまいました。せっかく贈ってもらったのに、こんな 感想でした。

朝日新聞の書評を読んで

川本氏の評、ずいぶんと外した評ですね(意図的に?)。書評というより著者の受け売りの信時紹介ですか。あの著者がぼくより一世代若いことも引っかかるんです。戦時中の極限的な状況での、ひとびとの発言や意見を、戦後世代があれこれコメントできるのか。それと対置できるほどの大きな経験を自分はしているのか、という疑問です。

「海道東征」は一度は聴いてみたいですね、「その比類のない荘重な美しさ」 というのを!


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