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千と千尋の神隠し

宮崎駿の『千と千尋の神隠し』を見た。
文句なく面白かった。最近見た映画でというより、今まで見た映画のなかで一番抵抗なく楽しめた。

普通、映画を見ていても筋の運びが気になったり、設定の矛盾にしらけたりするのだが、この映画は何も考える必要がない。もう手放しで、自分の時間を映画の時間にゆだねてしまえる。

話はまったくの虚構であって、説明してもしかたのない非現実の世界なのだが、それに何の違和感もない。こういう世界は当然なのだ。いつだか子供の頃には、こんな世界が存在するはずだと希求していた世界である。その存在を信じていた、といってしまうには、自分自身あまりに頭でっかちな子供ではあったが………

石森正太郎のマンガだったか、赤ちゃんが、ほんの幼児期の間だけ彼らだけの世界をもって、おシャブリをくわえたままジェット機を操縦して、世の中の悪と戦い、成長するとまたくその記憶を失ってしまうというのがあった。あのマンガに抱いた強い憧憬を、この年になって思い出させてくれた。

映画批評によくあるように、登場人物やシチュエーションを、実生活に置き換えていろいろ議論できるだけの奥行きはたっぷりあるのだが、そんなことはどうでもいいのであって、あの油屋(湯屋)の玄関に懸かる橋(まさに結界)の遙か下 の海に、レールが敷かれて電車が走っている情景だけで、意味もなく納得して、“そうそう、ここには絶対に電車が走っていなくちゃ”とつぶやいてしまうのであった。


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