道草Web

2006年5月7日 日曜日 雨

新橋演舞場。5月歌舞伎 昼の部

『ひと夜』 おとよ 芝雀、松太郎 信二郎、田口義道 歌昇

なんでこんな芝居を歌舞伎役者がやるのか理解できない。ほとんど退屈を通りこして不愉快。

『寿式三番叟』 三番叟 染五郎、亀治郎 、千歳 種太郎、翁 歌六

染五郎、亀治郎の三番叟、いまいち。TVで見た三響会の萬斎と染五郎の三番叟では、染五郎の方がいいとおもったが、これは平凡なでき。この演目の場合、能とは違って翁や千歳はおまけなのだろうけど、11月の歌舞伎座『大経師昔暦』でチャリ役の助右衛門(歌六)が屋根の上で褌いっちょうの尻を振り回していたイメージが鮮明で、どうも翁のイメージと合わない。

『夏祭浪花鑑』 団七九郎兵衛 吉右衛門、お梶 芝雀、お辰 福助、一寸徳兵衛 信二郎
義平次 歌六、釣舟三婦 段四郎

吉右衛門らしい演出の工夫が随所にあったが、ややもの足りなかった。

義父殺しの場面、3月のコクーンの四谷怪談の殺陣を見てしまうと、とくにその感あり。様式化された殺人が、様式を維持しきれない。様式の合間に、はみ出した生の動きが見えて興ざめしてしまう、といえばいいのか。興ざめといえば、三婦の段四郎、まともに科白がいえなくてしどろもどろ。しまいには絶句して、プロンプターの声が場内にひびいたりして、まさに興ざめ。

2006年5月12日 金曜日 曇りから五月晴れ

新橋演舞場 五月大歌舞伎 夜の部

増補双級巴『石川五右衛門』 石川五右衛門 吉右衛門、此下久吉 染五郎

勅使の中納言に化けた五右衛門が花道で此下久吉を見返しての含み笑い。先代幸四郎そっくり。

つづらを背負っての宙乗りの不安定な姿勢で、型が崩れないのが流石。つづらの作りが悪かったのが、背板が口を開け、観客席に落ちるのではないかとひやひやした。最後の南禅寺の三門。中央に吉右衛門が立つ。それだけで、芝居になる。

『京鹿子娘道成寺』白拍子花子 福助

まあまあ無難にこなした、といったところか。まだ凄みがない。冒頭、花道へ出て鐘を見返すところで、場内が静まるようでないと。手振りはいかにも歌右衛門ゆずり、しかし、全体の風情は梅幸の線ではなかったか。

『松竹梅湯島掛額』 紅屋長兵衛 吉右衛門、小姓吉三郎 染五郎、八百屋お七 亀治郎、長沼六郎 信二郎

前半はドタバタ喜劇風で笑いが絶えない。時代物の大看板が、いつもの重厚な演技とはかけ離れたおどけたしぐさで笑いをさそう。ただの役者がやればただのドタバタだが、彼がやるから豊かな笑いになる。連発するギャグは最近の話題を取り込んで今風。それ自体さして面白いものではないが、古典劇の中に突如出現する今のおかしさ。御土砂(おどしゃ)で、身体がぐにゃぐにゃになる場面で、観客と場内係りに扮した役者まで登場させ、はては、幕引き係りにまで御土砂をかけてぐにゃぐにゃにして、代わりに吉右衛門が幕を引いた。文句なく楽しかった。吉右衛門、だいぶ科白をとちっていたが、時代物では致命的でも、この芝居なら愛嬌のうち。この手の役柄は不得手といっているらしいが、どうしどうして、えもいえぬ愛嬌があっていい。

後半は、亀治郎のお七の人形振り。これははっきりいってつまらない。人形振りがさっぱり決まらない。文楽人形の3人遣いのつもりか、黒子が3人つくが、人間が舞うので、足遣いは不要になる。だから、主遣いと左遣いの2人がうしろにつき、足遣いは黒御簾の前に台を置き足拍子を踏む。しかし、黒子の動きが意味不明で邪魔になる。舞台転換で人形を運ぶために人形遣いが必要なことはわかるが、それ以外、なぜ派手な赤い紐を付けた黒子がいなければならないのかはっきりしない。


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