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| 安行原の蛇造り 2008年5月24日今日は安行原の蛇造りを掛け替える日である。是非みたいものと予定していた。
蛇造りのいわれは上の写真のとおりだが、実際には、時間運びも作り方もこの説明とは違っていた。 開始時間は確認しておく必要があるとおもって、あらかじめ川口市の文化財センターに問い合わせたところ、最近は、朝の9時頃には始まるという。看板どおり3時にいったのでは、それこそ後の祭りだった。 天気予報では午後からくずれるから、気にしながら9時すこし前に自転車で家をでた。自転車なら10分もかからない。
9時すこしすぎに到着すると、もうすでに古い蛇は下ろされてやぐらはきれいになっていて、新しい蛇を作る仕事は始まっていた。
この時点ではなにがなんだか見当がつかなかったが、やがて役割がだんだん分かってきた。大きなグループが2つあり、それらが蛇の上顎と下顎を作る。まあ、巨大な草鞋と考えればよかろう。それの一端を結び合わせて、もう一端を開けば、蛇が口を開けた風になる。 左上の写真は、まさに蛇の頭の先頭、つまり鼻の分を作りだしたばかりのところだった。すべては写真に見える藁の束を草履のように組み上げて作る。この束のサイズと本数でおおむね蛇頭の大きさが決まる。今年使用している藁は、一昨年の稲のもので、乾燥しすぎて工作がしにくいとこぼしている。このあたりでも、そうそう稲藁がそろわない時代なのだ。
この巻き付け加減がむずかしい。下で見上げる先輩格の老人からいろいろ指示が飛ぶ。
この写真に出てくる男性が一番の若手。しかし、同年配はいない。ここも後継者不足のようである。
昼食後の休憩時間に、たまたま近くに座った長老格のお年寄り(エンジのシャツのひと)が話しかけてきた。これ幸いと、どちらが上顎でどちらが下顎になるのか訊ねた。決まっていないそうだ。成り行きで、具合の良さそうなように決めるという。今年は奥が上顎、手前が下顎になった。 それと、説明板によると、以前は3時頃から始まったようだがと訊くと、その日の農作業を終えてから集まったのでそのくらいの時間になったという。昔は、夜になって藁を燃やして灯りを採って作り続けたという。なお、雨のときは、近所にある会長?の家に広い車庫があるので、そこで作るのだそうだ。町会長だか、園芸組合の会長だか、保存会の会長だかは聞きそこなった。 先ほどの休憩といい、昼食といい、ここではビールはおろか酒は一切でない。うちの自治会ならみんなしらけて帰ってしまうかもしれない。そのことも訊いてみたが、昔は飲んで騒動が起こるほどだったが、最近は飲む人がいなくなったそうである。もちろん、すべてが終わってから宴会があることはいうまでもない。 最近は、この蛇が人気で、なにかのイベントに出場を乞われるそうである。そのため、別に予備の蛇が作ってあるとも話してくれた。貸し出し用の予備の蛇は、この蛇と違って間近に観客の視線にさらされるので、もっと細部に気をつかって仕上げるとか。
長老が枕と呼んでいたのでそのまま枕としているが、おそらく蛇のくわえる玉の代用だろう。それに、物理的に蛇の口を開かせる働きもある。
この作業では、木を切るノコギリと藁を切るハサミ、それと縄を通す針が2種類使われる。ひとつは鉄の弧を描いたもので、これは表から刺して裏をまわって表へ戻ってくる。もうひとつは普通の針を大きくした竹製のもので、目途は縄が通るほど太い。見ていると鉄製のものはほとんど使われなかった。おそらく蛇の顎を伏せたままだと表側からしか作業ができないから鉄製の針が必要だろうが、人数が多ければ縦置きに支えて竹針を往復させたほうが簡単だからだろう。 木骨の結合でわずかに釘やネジが使われたが、蛇のおおかたは“結ぶ”ことで全体ができあがってゆく。
実はこのあと、枕の位置の具合が悪くお札がうまく収まらないという問題が起きた。結局、元締めを外して枕の付け替えとなった。
ちょうど1時頃に蛇はあがった。タイミング良く衆議院議員の某先生が到着し祝辞がはじまった。まだこのあと、先ほどの写真に載せた数珠を使って百万遍のお祈りがあるが、それは失敬して帰ることにした。傍らのテントでは祝宴の準備もできたようである。ああ、腹減った。が、念願の蛇造りをほぼ完全に見ることができて満足。
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